vol.1 (2014.9.1) | 学会本部活動通信
平成26年度会長
前 一廣
平成26, 27年度、会長職を拝命致しました前でございます。就任後、4ヶ月が経過し、漸く学会の状況を把握し、選挙時に掲げました抱負、方針も着手し始めました。会員諸氏への学会運営の透明性、情報の共有という趣旨で、現状を配信させて頂きます。以下、長文になりますが、ぜひご一読頂ければ幸いです。 小職の抱負、方針の詳細は、本年化学工学誌6月号およびWebサイトの会長挨拶欄に掲載させて頂いておりますが、その中で、各活動内容の要点と進捗状況を以下にご報告させて頂きます。 当学会は、3年前に75周年を迎え、Vision2023のもと新たな発展へ向けて展開しているところでありますが、基本は会員諸氏の活動にあります。この2年間は、「会員が快適かつ有用に、活動・活用できる学会」を目指すことを基本方針とし、学会の活用価値のさらなる向上を目指して活動していきたいと考えています。 この方針のもと、本年度は、
- 産学連携を強みとする学会の特質強化、
- 日本における学のポジションの再構築、
- 国際的活動の定着、
- 本部/支部/地区懇話会の連携醸成
の4項目を設定し、活動を開始しております。以下、この内容をもう少し説明させて頂きます。
◆産学連携のさらなる推進に関して 本学会の芯となる部分の増強に関するものです。本会発展の最大の鍵は、人材育成と化学技術イノベーションの両面での産学連携にあります。学生から産業界中堅までの人材育成をシームレスに繋ぐ活動として、すでに施行されている人材育成プログラムの着実な拡大に加えて、これらを社会的に認知する活動を実施してまいります。また、地域活性化に対して、支部を中心に産学連携で地元企業の支援をしていきたいと考えています。現在、経産省との議論も開始し、具体的なシナリオを策定中で、地域の企業と大学とのさらなるコラボレーションを誘発することを考えております。プロジェクトとして上手く俎上に乗るかは判りませんが、これによって、支部のさらなる活性化、地域の各大学の教員や企業への外部資金確保、地域社会における貢献度向上を支援していけるよう努力していきたいと考えています。一方、開発型企業を中心に、出口を基軸した産産連携についても検討を進めております。今後、ビジョン委員会を中心に定期的に情報を配信させて頂きます。
◆生産人材を担う学生の確保に関して まず、すでに施行されている人材育成プログラムの着実な拡大に加えて、SCEネットのシニアエンジニアの方々の知識、経験を、現役世代(特に若手企業正会員)へ還元する仕組みを考えていきたいと思っております、 一方、大学を取り巻く環境を概観すると、生産技術に係る人材の高まるニーズに反して、全国の化学工学系の研究室は減少傾向にあります。生産技術人材を確保するには一定数以上の化学工学系教員の確保が必須であります。この一支援策として、化学工学研究の新定量評価指標を策定に関する検討を特別委員会にて開始しており、すでに多くのアイデアが出されております。今後、これを纏めていくとともに、産業界の公的認定、日本学術会議内での認知も含めて努力し、化学工学分野の教員の研究評価の向上を支援していきたいと考えています。 また、他化学系学会とも連携しながら、暫く失っていた日本学術会議会員(化学分野)の席を確保すべく学会を挙げて取り組み、研究施策、科研費などへの還元を目指していきたいと考えています。学術会議会員への復帰に関しては、順調に推移していることのみ、お伝えしておきます。
◆ 国際的活動の定着に関して 真の「国際化」とは、日本国内での会員諸氏の活動が国際化されていることにあると考えております。学会は学生に飛躍の機会を与える場でもあります。よって、これを進めるために、本部大会での英語セッションの拡充(各専門分野の第一人者の招待講演も視野)、部会を中心とした国際シンポジウムの奨励や諸外国学会との共催事業の推進など、正会員が国際的に情報を発信し収集できる場として活用できる環境を整えていきたいと考えています。
◆本部/支部/地区懇話会の連携醸成に関して 全国の会員の方への均等な情報提供に関するものであります。当学会は伝統的に地区懇話会、支部を中心とする地域での密着した活動によって支えられてきました。7支部体制に完全移行して15年が経過し、さらに発展する時期にあると考えています。すでに、各支部を訪問させて頂き、支部幹事の方々と意見交換を進めております。各地区懇話会、支部の独立性を担保しつつ、ICTを利用して、本部の情報、各支部の情報が均等に提供されるようにしていきたいと考えております。特に、化学工学初歩教育に関しては、支部連携で共通教育を考えていくことなども検討を開始しております。いずれにせよ、会員増強のベースは地縁によるところが大きく、各支部の特質に合わせて、これを支援する活動を粛々と進めていきたいと思います。
◆会員増強に関して 正会員、法人会員は年々減少しており、しっかりと対策を考えていく必要があります。特に、20代後半~30代の正会員数の減少が大きい状況です。これは、将来の化学工学会(=各自の専門であるケミカルエンジニアの地位)の基盤が揺らぐ可能性を示唆しています。すなわち、20代、30代の方が管理職になるころ、自分の専門分野の社会的プレゼンスが低下し、自らの地位、処遇にも少なからず影響するということになります。このような事態を回避すべく、先日、化学産業日報の記者インタビューを実施し、近く、非会員のケミカルエンジニアに入会の呼びかけが掲載されることになっております。また、現在、理事全員に方策を検討して頂いており、秋をめどにいくつかの対応策を纏めたいと考えております。いずれにせよ、月800円で化学工学会メンバーとして母集団を担保しておくことが、自らのキャリアでマイナス要素を作らないことになっている点を認識し、積極的に学会活動に参画して頂ければと願っています。
◆最後に福島原発問題対応に関して 日本の中で総合的にプロセスを扱う唯一の公益法人として、福島原発を始めとする多難な課題に対して真摯に考えていきたいと思っております。現在、東北地域で直面しているプロセスに関する多くの課題に対して最も専門性を有する本学会が適切かつ客観的な解決案を提示することは責務と感じております。これには技術以外の多くの壁があることも重々承知しておりますが、プロセス技術を標榜する学会として、汚染水などの課題に対して、プロセス技術の観点から体系的にレポートを纏め公表していくことで、適切なプロセス技術を選定して頂く支援を行っていきたいと考えています。すでに、SCEネットにも参画して頂き、長谷部特任理事のもと、特別委員会を結成して活動を開始しつつあります。また、小職の役割として、これら委員会のアウトカムを適切にピックアップして頂くよう、関係団体へのコネクションも進めております。作業福島原発問題を適切に解決し、世界に発信することで、日本の産業技術への信頼が大きく向上することは間違いなく、今こそ全産業技術者の叡智を結集するべき時と考えています。ぜひ、本学会を通じて貢献して頂ければ有難く思っています。 以上、現状を述べましたが、会長は会員諸氏から一時的に公的な学会の纏め役を委託される職であり、公明正大に維持発展させていくことが役目と考えており、上で述べた内容も、より良いものへと柔軟に修正すれば良いと思っております。また、2年間でできることは限られております。しかし、「革新なくして発展なし」という信念で、会員諸氏とともに新展開への道筋をつけ、一歩でも魅力ある学会として次世代に橋渡ししていきたいと考えております。同時代に同じ学会に所属しているというのも何かの縁です。是非、会員諸氏の積極的な学会活動への参画を期待しております。